取材を受けたことをきっかけに、お客さまからよく尋ねられることやお店としてのあり方を今一度言葉にして整理したくなりました。その一部を覚え書きとして残します。やや長文ですので、もしご興味のある方がいらっしゃいましたらご覧下さいませ。
〈本との出会いの場〉
本に救われた経験や自分を支える言葉たち。どんなに便利になっても本のぬくもりは存在し続けてほしい。そのあたりが私たちのいちばんの原動力です。
新刊本や古本であるとか、ランキングなどは全く関係なく、私たち夫婦がこれまでに出会ってきた本を中心に、お客さまや友人から教えていただいた本、最近では我が家のこどもたちのおすすめも並びます。
本棚はまるで生きものですね。マイペースなひつじ日和らしく本棚も緩やかに新陳代謝しています。本は心の糧になってくれます。その方にとっての大切な一冊に出会えますように。一冊一冊手渡す喜びを日々感じています。
〈心の泉を満たす場〉
ほっとひと息つける空間になれたら。
大切にしたいのは心の豊かさです。
心静かなひと時をお過ごしくださいませ。
〈気づき、インスピレーションの場〉
余白ができると気づきを得やすいですよね。
のんびり、ぼんやりする時間は大事かなと。
お客さまがリラックスされていて、ある意識の状態にあれば、不思議と必要な本に目がとまり、お客さまへ自然に届く気がします。
〈喫茶〉
コーヒーは我が家のお気に入りで十数年愛飲しているフェアトレード、スペシャリティコーヒーの豆を、ハンドドリップで。
お茶は実際に茶畑に足を運び交流しながら信頼を深めた生産者の方から仕入れを。緑茶は抽出温度の違いによる味わいを感じられるよう二煎お楽しみ下さい。香り豊かな和紅茶や芳しいほうじ茶もおすすめ。太陽と静岡の恵みに感謝し心を込めてご用意しています。
〈長いお休み後のお店再開について〉
やりたいことだけをゆとりを持ってやれる状況を整え、余計なものは削ぎ落としてお店を再開しました。たまたまパートナーが本屋をやりたい人というのがきっかけです。私自身は流れに身を任せているうちにお店番に。
夫婦で心を合わせ同じ方向をみつめて歩むことによりお店ができています。生活を共にする中で、相手をよりよく知り大切にしたいことや生きる姿勢を擦り合わせていく時、互いから溢れ出た副産物として「ひつじ日和」が存在しています。根底に夫へのリスペクトがあるのかな。私は「ひつじ日和という生き方」を選んだのだと思います。
家族の事情で長野に引越すことになり、順調だったお店をお休みにすることは、後ろ髪を引かれる思いもありました。一方で飽きっぽい性格のせいか暮らしの変化を面白がっている自分もいました。
その時点では浜松に戻るかもわからなかった訳ですが、今となっては貴重な経験。夫の故郷である自然豊かな信州は、私にとっても恋しい気持ちが持続する場所になりました。
お店が長い眠りから覚めるまでの様々な経験は、今、ひつじ日和に立つ者としての自信につながっているように思います。これまでの人生に無駄な経験はひとつもなく、感謝の気持ちでお店を開けています。
〈どんな方にご来店いただきたいか〉
内省的な時間を持ちたい方。
自分で自分を満たす時間を持ちたい方。
(過度なおしゃべり、他者に配慮できない方や本を大切に取り扱えない方はお断りします)
(調べてもあまり情報がないという問いに対し)ひつじ日和に行ってみようと思うところから楽しんでいただきたいです。限られた空間ですので、わざわざ訪ねてくださった方がゆったり過ごせますよう、過剰な宣伝は控えています。おかげさまで、お客さまにもひつじ日和を大切にしていただけてうれしいです。
〈御書印(本屋さんのスタンプ巡り)について〉
全国各地から思いがけずたくさんの方が訪ねて下さいます。御書印集めで旅を楽しむお客さまとの一期一会。ひつじ日和に立ち寄って下さった方に、ここ浜松から「ふわっといい風にのって♪」と願いを込め一筆添えています。
〈これからの展望〉
小さなお店だからこそできることをこれからも淡々と。変わらないために変わり続けるイメージ。こどもたちの成長や家族の都合、何よりも私の気分に合わせて自由にひつじ日和を続けます。将来的には好きな時に長野と浜松を行ったり来たり、高原のひつじ日和もいいな〜。
〈最後に深いところの想いをお伝えします〉
何事におきましても、加速度を増しているように感じられる時代を生きていますが、外側に刺激を求めたり他者から結果的にエネルギーを奪ったりするようなあり方ではなく、自分で自分を満たし内側から溢れるような生き方をしたいと思っています。
次の世代と地球のために、楽しみながら小さなことから行動を変える。しっかり感じ、自分の頭で考えて選択し実際に行動する。ひとりの人間としてもお店としても、成熟していきたいです。
もし、そのささやかな歩みが、他者のちょっとした気づきや、笑顔のきっかけになれるのならうれしく思います。私たちは調和した穏やかなあり方を選びます。どうか小さな喜びが循環するようなお店になりますように。
読書空間 ひつじ日和