漱石先生ぞな、もし

 

編集者でも作家でもあった半藤さん。
義祖父は夏目漱石。

ご専門の昭和史について調べていると、必然的に夏目漱石が生きた時代に辿りつくそうです。
漱石の本を読み、いろいろと調べていたら、漱石に関するちょっとしたエピソードが本になるくらいたくさん集まってしまいました。

 

少し硬い印象のある夏目漱石。
この本からはかなり愉快な面を持っているように感じます。
門下生に結構突っ込まれていたり。

一方あまり政治的な発言はしていません。
それでもかなりリベラルな雰囲気を感じます。
当時の総理大臣、西園寺公望からの招待を辞退するのは痛快です。

 

記録が残っていて、しかも研究対象として細かく分析されてしまう人はそうそう居ないように思います。

 

夏目漱石の作品を読みたくなりました。

 

 

半藤 一利「礎石先生ぞな、もし」

 

 

芥川龍之介、久米正雄 宛 夏目漱石の手紙抜粋

「牛になることはどうしても必要です。われわれはとかく馬になりたがるが、牛にはなかなかなりきれないです。あせってはいけません。頭を悪くしてはいけません。根気ずくでおいでなさい。世の中は根気の前に頭を下げる事を知っていますが、火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません。うんうん死ぬまで押すのです。それだけです。決して相手をこしらえてそれを押しちゃいけません。相手はいくらでも後から後から出てきます。そうしてわれわれを悩ませます。牛は超然として押して行くのです。何を押すのかと聞くなら申します。人間を押すのです。文士を押すのではありません。」

 

 

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