読んだ本のメモ(書棚担当)

小田嶋隆「小田嶋隆のコラムの向こう側」

何かを始めるときには独りがいいと常々思っています。複数人であったり、スタートアップ共有場所であったりはできるだけ避けた方が可能性が高まるのではと思っています。 完全に否定するのではなく、それはそれで良い所もあるかと思いますが、独りで考えつく…

伊坂幸太郎「逆ソクラテス」

世の中は認知バイアス(決めつけ)にあふれています。同じ誕生月の人が同じ運命で無いように、同じ属性だからといって同じ人は一人もいません。 争いや差別の根源の一つにもなっていそうです。 できるだけ排除したいのですが、不完全である人間にはとても難し…

リチャード・プレストン「ホット・ゾーン」

ウイルスはこの世の中の至る所に存在します。その多くは人間にとって無害なものばかり。むしろ長い間共存してきました。遺伝子的にも融合しています。ある研究によると人間の遺伝子の10%はウイルスの遺伝子ではないかと言われています。 時には強毒化するウ…

カウテル・アディミ「アルジェリア、シャラ通りの小さな書店」

「富」という言葉から何を連想するでしょうか。おそらく金銭的なものを挙げる人が多いかと思います。 カウテル・アディミさんはこの本に「われらの富」というタイトルを付けました。この本の中の富は本であり出版であり、自由であり、人間関係です。 1900年…

辛酸なめ子「大人のコミュニケーション術」

独自の世界観をお持ちの辛酸なめ子さん。じわじわと湧いてくるような面白さです。 飲み会に行くんだけれど早く帰りたかったり。年賀状を1,300枚も出したり。(大半が宛先不明で返ってくる)ラインには何日も何も届かなかったり。モテるエッセンスを飲んでみた…

森田真生 編 岡潔「数学する人生」

世捨て人のような数学者、岡潔。数学で偉大な功績を残し、文化勲章を受章した後、唐突に世の中に対し発信を始めます。 唯物主義、個人主義が行き過ぎ、生きる喜びを失おうとしている日本人に対しての警鐘でした。 本来の意味とは異なるのですが「情緒」とい…

小田嶋隆「東京四次元紀行」

探偵をやっている、という人に会ったことがあります。組織に属し、何かの依頼に対して調査をしていたようです。よくあるのは就職の内示を出す前の調査だとか。その人の出身地に行って近所の人に評判を聞いていたみたいです。世の中はそんなふうに回っている…

「発掘捏造」

人間はどうして不正や捏造をしてしまうのでしょうか。自動車の検査、研究論文、食品偽装、建築物の耐震計算偽造、政治資金。近年だけも数多くの問題が指摘されています。 いくつかの原因が考えられます。個人的名誉、利益、圧力、評価。 やはり強すぎる競争…

武田砂鉄「べつに怒ってない」

あまり動かず、ぼーっとし、何か変なことを考え続けている印象の武田砂鉄さん。きっとどこかに行くよりも部屋に籠っている方が好きに違いありません。 しようと思ったけどできなかったこと、よくわからないけれどひとまず考えてしまったことが集まった本です…

つばた英子・つばたしゅういち「ときをためる暮らし」

太陽が無ければ生きていけない人類。消費するだけではなく全員が生産する側になる必要があります。生産とは太陽の恵みを人間が利用できる形にすること。野菜や果物を育てることなどもそれにあたります。 80代でも元気に畑仕事をするつばた夫妻。自分たちだけ…

中島岳志「オルテガ 大衆の反逆」

寛容さがどんどん失われていっているように感じます。自分と意見の合わない人々に対しては、論破という方法で優位に立とうとします。強いものには忖度し、弱いものに対しては力で押し通します。 SNSやインターネットは匿名性が高く、力を行使するためのとて…

岸本佐知子「ひみつのしつもん」

最近はIDとパスワードを設定することが多くなっています。IDはメールアドレス、というところが多いでしょうか。 以前メールアドレスを変更したとき、IDを変更できる場合と、旧メールアドレスをそのまま使い続けなければいけない場合があり、不親切を感じたこ…

福﨑剛「山を買う」

ある場所である人たちの会話が耳に入ってきました。「山があるんだけれど、大変で・・」おそらく相続か何かで遠方に山を持っている方のようです。山を持っている人はそれほど多くは無いでしょう。そして維持管理は大変に違いありません。 最近ソロキャンプ目…

福岡伸一「動的平衡 ダイアローグ」

福岡ハカセが個性的で各分野で活躍している人たちと対談をした記録です。 福岡ハカセのメインテーマ、動的平衡。動的平衡を簡単に言うと、変化していないと見えるものも、細部では常に変化している状態を指します。自然界でおきたこと、植物や動物の内部での…

清水浩史「幻島図鑑」

「秘島図鑑」でなかなかたどりつけない島々を訪問した清水さん。今回は幻島を回ります。 幻島とは、はかなげで希少性のある小さな島、と定義しました。 人が数人住んでいる島、地図に掲載されているけれど今は確認できない島、かつてはあったと伝えられてい…

吉川トリコ「余命一年、男をかう」

毎年健康診断をしていますが、そこでガンとか見つかってしまったらどうするのか、と思ってしまいます。自分だけだったら放っておくかもしれません。妻や子どものことを考えるとやっぱり治療をするんだろうな、とも思います。治療で治るのかどうかにもよりま…

本を贈る

本を作る過程には驚くほど多くの人が関わっています。編集、装丁、校正、印刷、製本、流通・・。 各工程の専門家が本について思うところを記しました。 本にはそれぞれの想いが込められており、見ただけでそれが伝わる時があります。そういう本は内容にも納…

「雪舟筆牧牛図」

水墨画にはこころ惹かれる何かがあります。それが何なのかはよくわかりません。墨だけでこれだけの表現ができるからでしょうか。長い時間の経過も関係があるのでしょうか。 500年以上前に描かれた雪舟の水墨画2点を基に、その周辺のあれこれを学ぶことのでき…

「社会を究める」

社会に対して違和感を持たない人はいないのではないでしょうか。また挫折を経験したことの無い人もいないと思います。学歴の高低に関係なく。 挫折や疑問は人生を豊かにするヒントであり薬味です。何かをこころの中に残してくれるでしょう。時には愛情や優し…

川上和人「無人島、研究と冒険、半分半分。」

誰も住んでいないし、立ち入りも制限されている島、南硫黄島。どこにでも行ってしまう人間がなかなか近付けない珍しい場所です。 この島がどんな様子なのか、研究者たちが何十年振りかに調査に行きました。 鳥類学者の川上和人さんもその一人。研究が第一の…

小川糸「つるかめ助産院」

ホモ・サピエンスの歴史はおおよそ30万年。その間ずっと命を繋いできました。 病院も道具も無い時代でも人々は子どもを産み、育ててきたのです。 今は医療のおかげで比較的安全に出産ができるようになりました。その代わりに何か大きなものも失ってしまって…

青木海青子「不完全な司書」

何年か前、三重県から奈良県に入ったことがあります。いくつかの深い森や山を抜け、平地には昭和が取り残されたようなドライブインがありました。秋の終わりでしたが、いつ雪が降ってもおかしくないような寒々しい空。車なのに思わず後ろを振り向いてしまう…

カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」

カズオ・イシグロ作品に共通するテーマ「記憶」。この作品もやはり記憶がキーワードの一つとなっています。 人間から記憶がなくなってしまったらどうなるのでしょうか。憎しみが消え、争いがなくなるのでしょうか。それともただただ平滑な台のようなつるつる…

縣秀彦「面白くて眠れなくなる天文学」

夕方歩いていて星を見つけるとうれしくなります。東の低い空に不気味な満月を見つけてゾッとすることも。 その向こうの宇宙は今でも膨張を続けていて、そこには考えられないくらいの銀河や星があります。 普段の生活からは途方も無さ過ぎてよくわかりません…

白井健太郎「クックマートの競争戦略」

クックマートが浜松に何店舗かできました。豊橋を拠点とする食品スーパーです。 他のスーパーを利用していたので、初めて行ったのは3年ほど前。それからずっとクックマートです。 生鮮食品がおいしいことと、働いている人がたくさんいてレジ待ち時間がとても…

池上彰「おとなの教養」

知識の増え方は雪だるま式だと思います。最初はなかなか大きくなりませんが、あるポイントを超えるとどんどん膨らんでゆきます。それは人生の楽しみでもあり、豊かさにつながります。 池上さんが教養について、そして教養の一部をやさしく講義します。内容は…

エーメ「壁抜け男」

初めて読みました。マルセル・エーメ。1900年代前半に活躍した人です。 驚き、滑稽、切なさ、など様々な要素が詰まっている、先が気になる作品ばかり。 かなり変わっているけれど貧乏人に優しい古道具屋店主。子どもの代わりに作文を書く父親。パラレルワー…

パウロ・コエーリョ「賢人の視点」

ガルシア・マルケスに続いて南米の作家パウロ・コエーリョの本です。 ご自身の「経験や、誰かから教わった話、人生という川の流れを旅するなかで考えたことなどが集められて」います。 一つ一つは1ページから長くても5ページほど。 すぐに読めるけれどそのと…

司馬遼太郎「街道をゆく39 ニューヨーク散歩」

司馬遼太郎さんがニューヨーク行きました。出会う人、行く場所がとても魅力的に思えます。それは司馬遼太郎さんの、人を信じて良い所を見つけ出す能力、そして豊富な知識がそうさせているのではと感じます。 運転手のマクドナルド氏、案内の平川氏、ドナルド…

牟田都子「文にあたる」

何気なく読んだり見たりしている本や雑誌、新聞。多くの人が関わっていることは何となく知っていましたが、校正者という存在を知ったのはいつでしょうか。誤字、脱字を訂正するだけではなく、もっと大きな視点から文章を確認します。 牟田さんは偶然校正とい…