あたらしい憲法のはなし

 
六 戦争の放棄
 
そこで今度の憲法では、日本の国が、決して二度と戦争をしないように、二つのことを決めました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、一切持たないということです。これから先日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、決して心細く思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国より先に行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
もう一つは、よその国と争いごとがおこったとき、決して戦争によって、相手を負かして、自分の言い分を通そうとしないということを決めたのです。おだやかに相談をして、きまりをつけようというのです。なぜならば、戦をしかけることは、結局、自分の国を滅ぼすようなはめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、国の力で、相手を脅すようなことは、一切しないことに決めたのです。これを戦争の放棄というのです。そうしてよその国と仲良くして、世界中の国が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の国は、栄えてゆけるのです。
みなさん、あの恐ろしい戦争が、二度と起こらないように、また戦争を二度と起こさないようにいたしましょう。


※「あたらしい憲法のはなし」より抜粋
※「あたらしい憲法のはなし」は1947年(昭和22年)文部省が発行した中学校1年生用の社会の教科書です。
※読みやすいように漢字変換しています。

 
 
「あたらしい憲法のはなし」
 
 
 

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