「そうじゃ、そうじゃ、今回は、これだけはあんたに言っておかんと思っていたことがあるんじゃ」
80代の弁造さんが、30代の奥山さんに、突然声を掛けます。
自給自足のための庭を大切に育てる弁造さん。
奥山さんは14年に渡ってその弁造さんを訪ねます。
「めぐる季節を追いかけるようにして繰り返し弁造さんを訪ね、弁造さんと過ごした時間。そこで僕は、一体何を聞き、何を感じたのだろうか。そしてそこから何を得ることができたのだろうか。」
豊かな庭。エスキース(スケッチ、下絵の意)。簡素な食事。
時には言い争いをすることも。
そこには静謐な時間があります。
弁造さんと庭の様々な写真を撮りながら奥山さんは考えます。
「人が生きることの切実なまでの実感、ひいては体温にも似た熱のかけらのようなものを伝えてくれないだろうか。それは写真を撮ってきた者の小さな願いでもある。」
この本からは十分に伝わってきます。
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奥山淳志「庭とエスキース」
読書空間 ひつじ日和