森と湖と

 
 
外の気温はただ今32℃。
このところお客さまとのご挨拶は「暑いですね〜」が定番です。
 
少しでも涼やかな気分になるために手にとったのはこちらの小画集。
日本画家、東山魁夷さんが北欧を旅された時のものです。
 
森と湖、静寂、短い夏、ひっそりした町並み、雪、白樺、青緑色、そして群青。
ページをめくるたびに体感温度が下がってきます。
 
もう随分前のことですが、NHKの番組で紹介されていたのをきっかけに、長野市にある東山魁夷館を訪ねたことがあります。
 
その番組ではピアニストの清塚信也さんがモーツァルトのピアノ協奏曲第23番第2楽章を演奏。
この曲からインスピレーションを得たのが、東山魁夷さんの代表作のひとつ、八ヶ岳の御射鹿池がモチーフといわれる「緑響く」だと紹介されていたように記憶しています。
 
その演奏が印象的でとても気に入り、好きになりました。
冷たい空気や美しい景色、私の様々な信州での初めてが、このピアノによって呼び覚まされます。
当時、こども連れで美術館へ行くにはまだ苦労する時期でしたが、東山さんの清澄な作品をどうしても見たくなってしまったのです。
 
東山魁夷さんは18歳の夏に信州を旅し、雄大な自然に強い感銘を受けたそうです。
その後、個人的な海外旅行が難しい頃であるのに、心の磁針の指す方向に従って北欧を旅しました。
 
この小画集の中にはこんな言葉があります。
 
「なぜ、北欧を旅して、私が心の故郷に巡り合ったのか。北欧の自然と、町と、そこに住む人々に対して、あれほど心を通い合わすことが出来たのか。私の北方的要素は、北方の人でない私、むしろ南の人間であるべき私の上に、積み重ねられたものである。」
 
ほんのわずかな共通点ですが、私の心もそのあたりに重なって惹かれていったようです。
 
と、いうわけで拡大解釈すれば、信州≒北欧になってきてしまい、遠州の暑い夏を乗り切る涼やかアイテムになりました。モーツァルトのピアノとともに…。
 
 
 
 
 
 東山魁夷「森と湖と」
 
 
 
 清塚信也「モーツァルト ピアノ協奏曲第23番 第2楽章」
 
 
 
 
 
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