奈倉有里「夕暮れに夜明けの歌を」

 

2002年から2008年にロシアで文学を学んだ奈倉さん。

時代はなんとなく息苦しく、暗い方へ向かいます。

まだクリミアの併合は先のこと。

ロシアがウクライナへ侵攻するなんて思いもよらないけれど、周辺国に対する差別的な発言や、ナショナリズム高揚の行きつく結果だったのかもしれません。

 

ロシアに到着する前からドラマがあります。

そして寮や学校での貴重な出会い、学びの機会、ユニークな文化や歴史。

スポンジのようにどんどん吸収します。

 

 

この本に登場する魅力的な人物の一人。

アントーノフ先生。文学研究が専門です。

普段は薄汚れた酔っ払いみたいなのに講義では人が変わった様に。

優れた俳優のように学生を惹き付けます。

決して力を用いることはありません。

卒業直前の内緒話は心を打つ何かがありました。

先生の授業は今でもきっと奈倉さんの重要な一部分になっているのでしょう。

数年後、先生との再会は叶うのでしょうか。

 

 

 

読みたくなった本

ワシーリー・アクショーノフ「クリミア島」

アンドレイ・クルコフ「灰色のミツバチ」

 

 

 

 

奈倉有里「夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く」

 

 

 

レフ・トルストイ

「言葉は偉大だ。なぜなら言葉は人と人をつなぐこともできれば、人と人を分断することもできるからだ。言葉は愛のためにも使え、敵意と憎しみのためにも使えるからだ。人と人を分断するような言葉には注意しなさい」

 

 

灰色はしかし、単純なひとつの色ではない。白か黒かを迫らずにそれぞれの灰色に目を凝らすことなくしては、対立は終わらないのだろう。

 

 

 

読書空間 ひつじ日和