憤慨

 

本「スコット・フィッツジェラルド ベンジャミン・バトン」

(ホッパーさんの絵がいい雰囲気)

 

 

ふたりの出会いはこんな感じ。

 

〈あなたはロマンティックな年代に属してらっしゃいますわね。五十歳。二十五歳の人は世知にたけているだけ。三十歳は働きすぎて疲れている。四十歳は葉巻が燃えつきてしまうくらいに話すことが多い時期。六十歳ともなると、もうすぐ七十歳がせまっているわ。でも五十歳は円熟のとき。〉

 

あらあら、なんだかいい感じ。歳を重ねるのは素敵よね。ロマンティックな年代だというのなら、これからも楽しみね。なあんて、いい気分で読んでいましたら…

 

〈四十歳になった妻に魅力を感じなくなった。〉だと〜!けしからん、これは大憤慨。

 

それもそのはず。老人として生まれ若者へと逆行して生きるベンジャミン・バトン。ブラッド・ピット主演で映画化されたあのお話です。皆が老いていくのに自分だけどんどん若返るってどんな気分?もしかしたら吸血鬼よりせつない?これはストーリーを映画で既に知っていてよかったパターンなのかしら。

 

頭に浮かぶのは完全にブラッド・ピット。そんなにはっきり言われたら傷つくじゃない。あ、私が言われた訳じゃなかった、大混乱。わずか数十ページ。フィツジェラルドさんの技に、すっかりしてやられた気分。

 

 

 

スコット・フィッツジェラルド「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

 

 

 

 

読書空間 ひつじ日和