パリのおうち時間

 
 
 
 
中村江里子さんの本との出会いは溯ること20年近く前でしょうか。
初期のエッセイからはじまり、3人のお子さま方の成長を楽しみにしている密かなバルト家ファンです。
 
華やかな印象で遠くかけ離れた存在ですが、なぜだか本を開くと明るい気持ちになって、女性に生まれたことがうれしくなるのです。
 
長女がまだ赤ちゃん時代、丸の内の丸善だったかな…雪の舞う冷たい日にサイン会で握手していただきました。
 
酷くミーハーな気がしてとても恥ずかしいのですが、あの時、江里子さんの力を借りなかったのなら、今の自分じゃない気さえするのです。
 
心に嘘をついて生きてしまった20代、自分の本音さえわからなくなったズダボロの身とパッサパサに渇いた心。
 
あらゆる面において対極ともいえる存在からのエレガントな成分が、ある一定期間、必要だったようです。
 
報道で切り取られる一面、パリだとかファッションだとか、そういった表面的なことではなく、純粋で誠実な人柄や心の美しさにふれることで救われてきたのだと感謝しています。
 
ちょうどこどもたち3人の年齢差や性別が同じで、数年後を追いかけるような気持ちでいられるのも楽しみのひとつ。
 
著書から伝わる「家族を大切にしお子さまたちを慈しむ姿から感じるもの」がどれだけ心の支えになったことか…。
 
ズダボロとパッサパサが回復した頃、お世話になった江里子さんの本たちは、自分の中で卒業や回復祝い的な意味合いで手放すことにし、本棚コオロギさんにさしあげました。
 
そしてまだその頃は、ひつじ日和を開けようとも思っていませんでした。
 
本屋ですから当たり前なのですけれど、あの冷たい雪の日の丸善を思い出すと、江里子さんの新刊が「発注すればひつじ日和に届く」ということ事態、有り難いことに思えます。
 
久々に手にとると素直に気分が華やぎます。
ロックダウンの下、きちんと生活する方の強さとしなやかさが光ります。
いい50代に向けて心を磨いていこうと気持ちをあらたにすることができました。
 
 
 
中村江里子「パリのおうち時間」
 
 
 
 
読書空間 ひつじ日和