きことわ

 
 
 
学生の頃、旅先で出会ったきこちゃん。
接点は少なかったけれど「きこ」という響きが彼女にぴったりで、その名は強烈に覚えています。
あの紀子さまが紀子さまとして知られる前から、既にきこちゃんだったなんて。
もし自分がニ文字で〇子という名だったらどんな気分か、あれこれ想像しました。


あまりの美しさに息がとまりそうなお手紙をいただいたとわこさん。
こんな素敵な手紙を書ける大人を敬慕しました。


「きことわ」
とても心惹かれる音ですよね。


いつかゆっくり読んでみたいと思っていた朝吹真理子さんの作品です。
タイトルを見た瞬間に脳裏に浮かんだ、私が出会った「きことわ」二人も誘います。


永遠子(とわこ)は夢を見る。
貴子(きこ)は夢を見ない。


少女時代に葉山の別荘で時間を共にしたことのある二人が、別荘の取り壊しを機に25年ぶりの再会する物語です。
記憶と時間が混ざりあい、現実なのか夢なのか…。


静かに語られるのに気付くと海溝のように深いものに呑まれてしまいます。
人の内面に流れる時間や記憶は、物理的な拘束を超えて自在ですね。


物語のおしまい近く…「雨の日の白湯はやっぱり甘い」コーヒーも紅茶も雨の日のほうがまろやかになる…と。


裏付けなど、きっと、もうどうでもよくなります。


 
 朝吹真理子「きことわ」
 
 
 
 
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