月夜

 
 
 
夜の散歩道で角を曲がってふと見上げると、まんまるのお月様がありました。
 
 
不意打ちで満月に出くわすと、いつも新鮮な気持ちになります。
高まった気分のまま、数年前のある月夜の晩の思い出話になりました。
 
 
こどもたちを預けて夫婦で出掛けた演奏会。
二人で夜の外出なんていつぶりでしょう。
しかも静岡葵ホールまで。
これはもう、祖父母を巻き込んでの一大プロジェクトです。
 
 
フランチェスコ・トリスターノさんによるオールバッハのプログラム。
 
 
終始無言のピアニスト。
心地良い緊張感の中、聴こえるのはピアノの音だけ、ひたすら音に集中。
演奏が終わると聴衆に向かって合掌。
手を合わせる姿はなんて美しいのでしょう。
思わず私たちも合掌。
 
 
やっとの思いで出掛けた演奏会です。
満足感でいっぱいで、帰路につくのが惜しまれて…。
駅でもたついていると、目の前にいたのはなんと演奏を終えたご本人。
 
 
「トリスターノってお国はどこ?」
「ハローでいいよね?」
「どうしよう、どうしよう」
「こんなチャンスないよ!」
 
 
※正解はルクセンブルクの方です
 
 
勇気を出して声をかけてみますと拍子抜け、流暢な日本語が返ってきました。
マネージャーさんとはぐれてしまったそう。
 
 
あらためて素晴らしい今日の演奏の御礼をお伝えし、最後に三人仲良く、再び合掌し合ったのでした。
 
 
思いがけない幸運に弾んだ気持ちで見上げた静岡の空には、ぽんと満月が!
 
 
さて、お気に入りのアルバムのひとつ「Long Walk」
 
 
タイトルは、あのバッハが憧れのブクステフーデに会いに行くために歩いた400Kmの道のりからインスピレーションを得ているとか。
 
 
今も昔も誰にとっても、その心は同じかも。
人生は大切な誰かや、大切な何かに会いに行くためのロングウォークですね♡
 
 
 
 

フランチェスコ・トリスターノ「ロング・ウォーク」

 

 
 
 
読書空間 ひつじ日和