小さい頃なぜか自宅がピアノ教室でした。
どこかから先生が来て近隣の子供たちにピアノを教えていました。
ある時から当然レッスンを受けるようになりました。
その先生はとても厳しく毎回怒られてばかりでした。
練習曲ばかりの楽譜もチンプンカンプンでしたし、先生が何を言っているのかも理解できていなかったように思います。
徐々に生徒は減っていき、ついに姉と二人だけに。
ある日思い切って辞めたいと申し出たところ、あっさりと受理。
ピアノは時が止まったように置き去りにされ、ピアノと音楽に対する苦手意識だけが定着しました。
パリのセーヌ川の左岸に不思議なピアノ工房がありました。
ピアノをこよなく愛するカーハートさんは、その謎めいたお店が気になります。
物語だと思って読み始めたのですが、エッセイ的な本でした。
このピアノ工房を中心に据え、ピアノへの偏愛がたっぷりと詰め込まれています。
ヨーロッパにおけるピアノの歴史の厚さと深さに驚きます。
置き去りにされたあのピアノは、オーバーホールを経て、店内に置いてあります。
T.E.カーハート「パリ左岸のピアノ工房」
読書空間 ひつじ日和