避暑地

 
 
信州で暮らし始めたばかりの頃、突然できた時間を持て余し、幼い娘と二人だけで季節外れの軽井沢に出掛けたことがあります。
ほんのひと駅ふた駅なのに、軽井沢という響きはずるいです。
 
 
 
夏の日が嘘のように誰もいません。
人混みは嫌いだからこれでいいのだけれど、なぜだか泣けてきました。
哀しくて、少しだけ怒っていたような。
本人もわからなかった涙の意味は、娘には全くわからなかったでしょう。
 
 
 
長年かけて洗脳されてきた軽井沢のイメージと住んでみて感じること。
サーカスや道化みたいな哀しさ。
それとも、あれはただのホームシックだったのかな。
人が押し寄せる夏と、シーズンオフの避暑地の両方の気分を知ることができたのは財産のひとつに感じます。  
 
 
 
対峙すべきものが誰にでもひとつやふたつ。
一度くらいは深く向き合ってみる。
その後の人生はぐっと豊かになりそうです。
〈バカンス〉に逃げ出してばかりではね。
ふわふわとしていたものから目を覚まし、淡々と歩みを進められるようになることはありがたいです。
 
 
 
とはいえ、物語の世界でしばし遊ぶのもまた優雅なお楽しみ。
軽井沢もいつだって素敵な舞台です。
 
 
(軽井沢といえばこちら「本格小説」「嵐が丘」との比較も楽しい)
 
 
 
朝晩涼しいと感じることが増えてくると、もう夏も終わりですね。
決まってこの頃は少しさみしくなります。
どんなに暑い日もいずれ遠い日になります。
あともう少し、楽しみましょ♪
 
 
(避暑したい時に避暑できない夏も3回目 遠くにアクトタワーが見えた)
 
 
 
 
水村美苗「本格小説」
 
 
 
 
 
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