街と山のあいだ

 
 
ずっと気になっていた本を開きました。
ひっそりと贅沢な装丁。
予想どおり大満足の随筆でした。
ページをめくる度にいい香りがします。
素朴な紙質が香るこまやかな本です。
 
 
 
私はどちらかといえば街育ち海寄り。
山や自然に強く惹かれる気持ちもありつつ、都会的なものも好きな欲張りです。
バランスの良い浜松がちょうどいい。
その気分は「街と山のあいだ」というタイトルに呼ばれているように感じました。
 
 
 
若菜さんのような本格的な山歩きはできませんが、その文章に触れていると、どこか景色のいい所を歩きたいという気持ちがうずうずしてきます。 
 
 
 
〈一年に数度、たとえようもなく美しい日がある。… 略 … そうした日に、街を歩きながら、今日は山はいいだろうなあと思う。〉
 
 
 
もし、私たちもあのまま長野に暮らす選択をしていたのなら、そんな日に山がすぐそこにあったのかも。
そう思うと、胸がきゅっとしてきます。
それは恋しさに類似していて、いつも心の中にあります。
こうしてその想いをずっと持ち続けていられることは幸せです。
 
 
(蕎麦の花を初めて見た時)
 
 
 
終わりに近い章では、若菜さんが山歩き中に偶然出会った、浜松から来たという気のいいおじさんの話が出てきます。
その「やらまいかおじさん」は、ほんのちょっぴり登場するだけですが、浜松のことを褒めてもらったみたいでうれしい気持ちになりました。
 
 
※「やらまいか」は「やってみようじゃないか」という意味の遠州弁です
 
 
 
旅の断片
途上の旅
 
 
どうやらその続きの随筆もあるようです。
自分にとってのベストタイミングが来たら、ゆったり手にとってみたいです。
 
 
 
 

若菜晃子「街と山のあいだ」

 

 

若菜晃子「旅の断片」
 
 
若菜晃子「途上の旅」
 
 
 
 
 
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