「僕がその年老いた猿に出会ったのは、群馬県M*温泉の小さな旅館だった」
「僕」が行き当たりばったりの一人旅の途中で、やっと泊めてもらえることになったのは、その寂寥感溢れる温泉宿でした。
大学生の時、男4人で宿の予約もせずに遠方のあるイベントに行きました。
霧雨の夕方、くたくたになりながら宿泊施設を探しました。
人口の少ないところで、ホテルみたいなものは無さそうです。
数十分探しまわり、車中泊を覚悟した頃、あらわれたのが旅館のような建物。
聞いてみると素泊まりOKとのこと。
外観からは想像できないくらい清潔感のある部屋でした。
お風呂で冷えた体を温め、ぐっすり眠ることができました。
お会計はありえないくらい安価でした。
この本を読まなければ思い出しもしなかったであろう些細な出来事です。
猿には出会いませんでしたが、今思えばキツネかタヌキにだまされていただけなのかもしれません。
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村上春樹「一人称単数」
読書空間 ひつじ日和