先日ふと「巽辰吉(たつみたつきち)」という名前が思い浮かびました。
”たつ”が重複するためか、なぜか印象に残る名前です。
高校の現代文の教科書に登場した人物であることは覚えていましたが、その物語の内容も、誰が書いた文章なのかも全く覚えていませんでした。
現代文の教師が「巽辰吉は・・・」と力強く発していた言葉だけ、記憶の奥底からひっぱり出すことができました。
この本を読んでいたらなんと巽辰吉に再会しました。
井上靖さんの作品だったのです。
そうか、そんな内容だったのか。
井上靖さんの作品はどれもとても魅力的で定期的に読みたくなります。
その理由の一つが随筆「光陰矢の如し」にあるかと思います。
人生というものが、従ってまた人間というものが解らないからこそ、文学者の立場はあるのであり、いかに解らないかを書くのが文学者の仕事と言っていいかと思う。だから古今東西の文学の傑作は例外なく、人生の底知れぬ大きさ、不可解さ、神秘さを取り上げて、読者に感動を与えている作品である。この作品を読めば、人生というものが解るといったような大文学作品などない。
井上靖さんは浜松とも少しだけ縁があります。
井上靖文学館編「教科書で読んだ井上靖」
読書空間 ひつじ日和