信州にある限界集落のさらに限界的な地区。
その山の上に阿弥陀堂がありました。
堂守のおうめさんは90歳半ば。
それでも一人で生活をします。
トイレも水道もなく、冬の暖房は火鉢だけ。
そんな場所で40年以上も暮らしています。
その間そこから出たこともありませんでした。
一方、都市部の生活で心を病んでしまった女性医師。
信州の大自然やおうめさんと接することで次第に癒されて行きます。
厳しい冬があるからこそ春のありがたさを感じ、人間の力ではどうにもならないからこそ美しく、そして時には優しさを見せてくれます。
南木佳士「阿弥陀堂だより」
落ちこぼれてみないと見えなかった風景っていうのがあるのよ。背伸びばかりしていると視野に入らない丈の低いものの中に、実はしっかりと大地に根をおろしている大事なものがあったのよ。
読書空間 ひつじ日和