マチネ

 

植物模様とロウソク

 

「平野啓一郎が好きなんです。」

 

お会計の際に小さな告白がありました。よく知らないし読んだこともなかったのですが、それをきっかけに図らずも読んでしまいました。長い名前好きですしね。

 

「マチネの終わりに」

 

いつからか物語にあまり興味がわかなくなっていました。これは分厚いし共感しづらい設定だし。映画化した俳優さんたちの顔がチラついて読めないと予想しました。どこかで目にした宣伝だけでもイメージに影響してしまう。

 

読み始めは気乗りしてなかったと思います。しばらくすると、稀な集中を発揮。私なりの蒔野像と洋子像が頭の中に完成された頃には、部屋の音楽がクラッシックギターになっていました。

 

そもそも「マチネって、何じゃ?」というところから。マチネとはフランス語で午前中を意味し、昼の公演のことだそう。夜の公演はソワレ。それだけでもなるほど、でした。

 

印象に残るやりとりがいくつか。いちばん胸をつかれたのは、聖書から引用されたマルタとマリアの話。

 

遠藤周作さんの「聖書の中の女性たち」の中のマルタの章を再び開き、しばし考え込んでしまいました。物語であることを忘れてしまいそうになりながら。マルタ(早苗)とマリア(洋子)両者の気持ちを懸命に想像しながら。

 

物語の魅力と、本との出会いのおもしろさの両方を、あらためて感じる読書でした。あの小さな告白にも感謝します。

 

 

 

平野啓一郎「マチネの終わりに」

 

 

 

読書空間 ひつじ日和