世の中の景気が良くなると、古いものは捨てられ、新しいものが採用されます。
それは街並みも一緒です。
古きものは解体され、打ち捨てられます。
より大きいもの、より力のあるものに取って代わられてしまいます。
小さく弱いものは生存できません。
現在の地方都市が同じようなチェーン店で溢れてしまっているのはその結果なのではないでしょうか。
小さく弱い部分で生活をしている、普通の人々の物語。
どんな時代でも、好景気でも、何かを抱えながら人は生きてゆきます。
ちょうどこの小説に近い時代の函館市のジグソーパズルをやったことがあります。
おそらく早朝なのでしょう。
市場であろう場所は活発ですが、住宅地は眠ったまま。
行ったことも見たこともない街なのになんとなく親近感を覚えました。
そしてなぜかその時と同じような気持ちにもなりました。
海炭市は函館市がモデルだと知ったからかもしれませんが。
佐藤泰志「海炭市叙景」
読書空間 ひつじ日和