猛スピードで父は

 

冬の朝は布団の中が幸せ過ぎて、起きるのが大変です。

冬の布団マジック。

寝坊してしまいます。

 

寝坊で思い出した事が一つ。

 

小学校のときスピードスケートをやっていました。

その日は記録会があったのです。

年に数回ある大会はタイムの早い人しか出られないのですが、記録会は全員がレースに出場します。

 

ぼくは記録会組でした。

 

場所は川上村。

佐久平を北から南に縦断したところにあります。

八ヶ岳の麓と言ったら分かりやすいでしょうか。

家は浅間山の麓。

とにかく遠いんですね。

 

確か朝5時とかに出発だったと思います。

スケートクラブのメンバー全員バスで会場に向かいます。

そんな日にやってしまいました。

 

起きたら出発時刻をとうに過ぎていました。

 

姉も参加する予定だったのに、母親もお弁当をつくるはずだったのに。

みんなでお寝坊さん。

ほとんど二度寝満々だったのではないでしょうか。

 

ところが父が起きてきて、「いくぞ。」

 

大急ぎで準備して自家用車で出発。

確かスバルだったと思います。

まずはその行動にびっくり。

そして、車の早さにびっくり。

捕まったら確実に免停でしょう。

 

でもきっと父は朝の6時に、ど田舎で取り締まりしているはずはない、という確信があったのかもしれません。

 
 
 
 

記録会のタイムは伸びませんでしたが、あのスピードは記録的だったと思います。

 
 
 
 

 

長嶋有「猛スピードで母は」

 
 
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