関口良雄「昔日の客」

 
昔誰かに薦められた本。
やっと読むことができました。
ちょっと読み始めたら面白くてのめり込んじゃいました。

 

いろんな人と知り合いで、多分凄い人なのだと思います。
しかし決して威張らず、愛とユーモアにあふれ、笑わせたと思ったら泣かせます。
 
そういう使い方をするのか、という言葉もたくさんありました。
日本語をもっと勉強しなければと思います。

 

落ち葉を集める話、お父さんの話、洋服の話が好きでした。

 

関口さんも長野県飯田出身。菱田春草さんも飯田出身なんですね。原田泰司さんもそうですし、飯田の底力を感じます。
 
 
関口良雄「昔日の客」
 
 
 
いにしへも今のうつつも悲しくて
沙羅双樹の花散りにけるかも
                   齋藤茂吉
 

 

息つぐ間もない世相の中に生きていると、何か特別のきかっけがない限り、記憶は永久に鳥取砂丘に埋もれ、白兎海岸の波間に沈んでしまうかもしれない。
 

 

自分の服の型の古いのがよく判る。
だからといって、今自分の着ている服を捨てて、新調しようとは思わない。
ケチでいうのではない。しみったれでいうのでもない。
私と一緒に、ふるさとの信濃路や、鳥取の砂丘にも旅をしたこの合着の服が、好きなのである。
色がさめているわけではない。型がくずれているわけでもない。
三月の一人娘の結婚式には、私のことをよく知っているこの濃紺の服に、臙脂のネクタイをして出席しよう。
 

 

塩谷さんは、大山蓮華のような人だった。
素朴で、飾らず、気品高く。
 
 
 
読書空間 ひつじ日和