エリック・シブリン「「無伴奏チェロ組曲」を求めて」

 
この本を読もうと思った日は3月21日。バッハの誕生日です。
もし生きていれば329才の誕生日。
 
カザルスの生涯、バッハの生涯、無伴奏チェロ組曲の謎。
これらが著者の情熱を媒介にし、絶妙なハーモニーを奏でます。
 
エリック・シブリン氏が、この本を書くにあたっての目論見通り、一般読者でもとても読みやすく、楽しい本になっています。
特に、チェロを習い、バッハを唄い、体当たりでこの曲に迫っていく姿勢が、引いてみるとこっけいかもしれませんが、とても信頼できると思いました。
 
この本を読み始めてからバッハの聴き方が大きく変わりました。
無伴奏チェロ組曲も違った角度から聞き直したいと思います。
 

出会えてよかった本。
厚いですが、面白いので苦にならないと思います。
 

 

エリック・シブリン「「無伴奏チェロ組曲」を求めて」

 
 
ゲットー:最近この言葉に良く出会う

 

パブロ・カザルス「弦は使えば使うほど、音がよくなる。では、音が一番良くなるのはいつだかわかりますか?そう、弦が切れる寸前なのです。」

 

最小の言葉で、最大の内容を表現することに彼は大きな喜びを感じていたに違いない。余分な要素は全て切り捨てられ、音楽の心髄そのものだけが残されている。ひたすらなる瞑想、まさに時のそとに立ち、世を捨てた想いである。

 

モーツァルト K405 5つの4声フーガ  :平均律クラヴィーア曲集のアレンジ

 

かつてレオポルト候の城で演奏されていた通りにバッハを演奏するという考えにも惹かれるが、それがバッハを演奏する唯一のやり方だということにはならないだろう。カザルスでさえ、かつて演奏されていた通りにバッハの曲を甦らせようと思ったわけではあるまい。それぞれの時代がそれぞれのやり方でバッハを想像し直している。それが平凡ではあっても正しい結論ということになるだろう。このようにつねに想像し直される力を孕んでいるところに、バッハの永遠性の秘密が潜んでいるように思われる。
 
 

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