随筆集を読むのはお好きですか。
細切れの時間でも気軽に読めるし、自分の波長に合う文筆家さんだった時には友達に会えたようにうれしくなります。
甲斐みのりさんの「くらすたのしみ」
どんな方なのか全く知らずに、なんとなく気になって読み始めたのですが、響く言葉が多くて思いがけず心が躍りました。
ほんのちょっとでも共感できるエピソードがあれば親しみを覚え、やわらかい気持ちになれるものですね。
例えば「雨の日のお気に入り」の章で...。
雨の日に気持ちが曇らないための工夫や傘屋さんでの修理のお話が出てきます。
私の頭の中にはご実家が傘屋さんを営む後輩がいたことが浮かんできたり、早過ぎる梅雨入りもまあいいかと思えたり。
学級文庫で銀色夏生さんの文庫本に出会ったお話が出てくる章では、その頃の中学生にありがちな情景が懐かしく思い出されます。
すっかり忘れていた存在を急に引っ張り出されるのも面白い経験です。
銀色夏生さんと言われて、私が唯一思い出せるのは「とにかくあてもなくてもこのドアをあけようよ」という詩集のタイトル。
忘れていたにもかかわらず、結果として「とにかくあてもなくてもドアを開け続けている」という効果を自分にもたらしていると気付き、はっとしました。
(この青いドアが気になって…)
本はピンときた時にゆったりと対峙してみると予想以上の恵みをもらえますね。
甲斐さんの潤沢な感性にたっぷりと満たされながら「くらすたのしみ」は「いきるたのしみ」だとしみじみ感じた随筆集でした。
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甲斐みのり「くらすたのしみ」
銀色夏生@とにかくあてもなくこのドアをあけようよ」
読書空間 ひつじ日和