(オーレリアン 蝶を愛する人)
何かに思い悩んでいたり、モヤモヤしたりすると「本なら買って良い」という学生時代のマイルール。
用はあってもなくても、ふらりと書店に寄っては、モヤモヤの分だけ本が増えていった頃が懐かしいです。
「愛することができる人は幸せだ」というタイトルどおり、まだ10代だった私は、きっと愛がわからなくて読んだのでしょう。
ヘッセの少年時代の淡い恋から晩年の万人への愛の境地、真理に至るまでの道のりが赤裸々に語られています。
痛々しいまでのヘッセの告白を、今再び見返してみますと、人の弱さ醜さ愚かさを、誰も裁けないことを思い知ります。
ヘッセは自分の心に忠実に生きる人。
聖人君子タイプではなく人間的魅力に溢れているところがいいです。
やや思い込みの激しい熱っぽい言葉も、今ならチャーミングな気もします。
幼い愛がより高次な愛に向かって螺旋を描いて上っていく素晴らしさを、私もしっかり味わって生きたいです。
読書空間 ひつじ日和