夏至

 
(水窪の清らかな水)
 
毎年この時期になると暑さや湿気をなんとかやり過ごす方法はないか悩みます。
どうせ付き合うのだからイメージだけでも良くしたい。
そんな時はイメージトレーニングの材料に、トラン・アン・ユン監督の映画「夏至」がぴったりです。
 
 
 
舞台はベトナム、ハノイの街。
全体を通してしっとり湿度の高い作品です。
ベトナム語の可愛いらしい響きのおかげか、やや重い内容を含む人間ドラマであっても、異国の者にはやわらいで伝わり優雅に感じます。
 
 
 
激しいスコールの中を、そんなすぐに壊れてしまいそうな傘で恋人に会いに行くなんて。
それでも彼女の表情は生き生き。
近頃は日本の雨の降り方も熱帯地域のよう。
もう開き直ってずぶ濡れで出掛けてしまおうか…。
 
 
 
三姉妹の黒髪は長く豊かに潤い、庭にしゃがみこんで手桶のお水で野菜や果物を清める姿が美しいです。
 
 
 
お水を張った金属製の器の取っ手を、やさしく撫でると次第に波紋が広がり、小さな水飛沫がはじける音を楽しむ…あれは楽器でしょうか。
 
 
 
*魚洗盆や噴水盆と呼ばれる民族楽器のようです。
 
 
 
兄妹の朝の目覚めのシーンが特に好き。
ゆったり気怠い音楽が流れると、それに合わせて伸びやかに手足をストレッチ。
ゆるゆる起き出す姿は理想的です。
携帯のアラーム音やうるさい目覚まし時計なんて、ほんと野暮。
 
 
 
窓を開け放った簡素な家は既に暑いはずですが、それを忘れるくらい気持ちよさそう。
何かに急かされるでもなく、まぶしい光に感謝して始まる1日。
ただ今日を生きている感じがいいなあ、と。
 
 
 
なんだか書いていたらいい気分になってきました。
夏至の頃を、いつもより楽しく過ごせる気がしませんか。
 
 
 
映画「夏至」
 
 
 
 
 
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