初めて地下鉄に乗ったのは、確か中学生の時だったでしょうか。
暗くてなんとなく陰気で怖かった印象があります。
大人になると平気ですが、平気でいられるのは根拠の無い信頼みたいなものだけです。
東京の地下断面はきっとカイメンのように空洞だらけで、信頼してよいのかどうかも判断が付きそうにありません。
とはいえまた行くことがあれば、やっぱり平気で乗っているんだと思います。
この本は、第二次世界大戦中に地下出版された詩集です。
地下組織や地下出版というと何やら良からぬ事を企んでいそうです。
でも良からぬことをしているのは戦争を始めた国家の方です。
巻き込まれた市民のささやかな抵抗です。
そんな状況にもかかわらず内容はとても牧歌的。
背景を知っているからか哀しみがつのります。
戦争が好きな人なんているわけありません。
「国家は過ぎ去り倒れゆき、
暴君たちは力を奪われる、
しかし大地と、空と、
子供のゆりかごは、
いつでもわたしたちとともにある」
(1939年 チェスワフ・ミウォシュ 解説より)
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