漱石日記を読みました。教科書に載っていた漱石先生のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく感じが楽しかったです。
ロンドン留学日記では、到着前の船の段階から具合が悪そう。下痢の日ばかりで不憫です。神経が弱いのに、そんな時代にあんなところまで。想像しただけで可哀想になってしまいます。世間様から見たら華々しい留学でしょうに、ご本人はさほどでも無い感じも面白いです。
満州や韓国にも渡り、国内でも様々な所へ。家への来訪者も多く、たくさんの人物に会い、手紙を送り合う様子がよくわかります。
出掛けたがるわりに、帰ると家がいちばん!と言う私を家族はいつも笑います。家がいちばんなことはよく承知していて、それを確認しているのかもしれないですね。漱石先生もその類いな気がしてきました。
家庭日記の鏡子夫人とのやりとりはとても人間的。喧嘩をしてはぶつぶつ、つらつら文句が並びます。朝寝坊ばかりの妻、でもどこかへ行く約束がある時だけは、驚くべく早く起きると。なんだか誰かみたい。あっぱれ。鏡子夫人と話してみたくなりました。
よそゆきの小説の顔もいいけれど、日記や書簡集に触れると、その人にぐっと近くなれるから好きです。この日記を読んでいる間だけは、「漱石先生」から親しみを込めて「金之助くん」と心の中の呼び名が変わりました。
夏目漱石「漱石日記」
読書空間 ひつじ日和