〈他者に理解されることを目的としない心の声は、散文よりも詩の形に近くなる〉という背表紙の文言に誘われて「停電の夜に」のジュンパ・ラヒリさんの本を手にとりました。
詩集?自伝?創作?
母国語ではないイタリア語。
ローマのアパートの古い机の奥から出てきた詩を綴ったノート。
状況を飲み込めないまま、進みます。
何年もかけラヒリさんが拾い集めたイタリア語の単語。選ばれた詩的な直感に溢れた〈語義〉のページが特に心惹かれました。めちゃくちゃですが、試しにイタリア語っぽく発音してみたら何か消えかけたものが灯るような感覚に。言語ごとに違う音の力の個性がおもしろいです。
日本語へ翻訳されてもそのインスピレーションを感じることはできたけれど、もしそのまま理解できるのなら一体どう感じるのかな。多言語に堪能な方を羨望してしまいました。
ジュンパ・ラヒリ「思い出すこと」
読書空間 ひつじ日和