蓮の花

 
 
 
昨年訪ねた華厳寺のお坊さまのお話で最も心に残っているのは、観音菩薩が手に持つ蓮の花のこと。
開いているのではなく、蕾であることに深い意味があると教えて下さいました。
 
 
 
そういえば旅先で仏像にお供えしたのもそうでした。
金色に輝く仏像の前のすらりとした蓮に目がとまりました。
 
 
 
モネの描く睡蓮とは似て非なる蓮の花。
睡蓮は水面近くに咲きますが、蓮は背が高いです。
 
 
 
この数年間、何故かぼんやりと気になり続けていました。
 
 
 
そのきっかけかもしれない幼い頃の記憶に、蓮糸で曼荼羅を織るお姫様の物語がありました。
題名を忘れていましたが、探してみましたら挿画ではっきりと思い出しました。
童話や昔話の全集の中でひときわ惹きつけられた「ちゅうじょうひめ」です。
 
 
 
シンデレラや白雪姫…今日はどのお姫様にしようかと選ぶ時、幼心にもしゃんとした気持ちの日でないと読んではいけないような存在感を感じました。
 
 
 
こんな感じのお話だったと思います。
〈蓮の茎を折り、糸を引き出して草花にかけてごらん。不思議な声に導かれた姫がその通りにすると、きれいに五色に染まり、機織りで織ると仏様のお姿が現れました。その織物は曼荼羅。眺めると心がきれいになります。〉
 
 
 
 
WEBでみつけた懐かしい挿画は記憶どおりの美しさでした。
曼荼羅を前に姫が手を合わす姿と蓮の花。
やはりここでも蕾。
 
 
 
中将姫とは、奈良の當麻寺に伝わる「当麻曼荼羅」を織ったとされる人物です。
継母に妬まれ命さえも狙われますが、周囲の助けを得て生き延び、仏の道を歩みます。
物語は変容しながらも、千年以上も語り継がれているそうです。
中将姫の説話がこんなに人々に慕われているとは知りませんでした。
 
 
 
蓮の花言葉は「清らかな心」
蕾である意味も…。
蓮の花を通じて中将姫に、長い年月をかけて教えていただきました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
日沖 敦子「時空を翔ける中将姫」
 
 
 
 
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