聖書のなかの女性たち

 

 

こちらは大事にしている母の本。
本人はもう忘れてしまったでしょう。
学校を休んだ日の暇つぶしに本棚にみつけたのが出会いです。
それ以来、女性の哀しみを人生の中で感じるたび手に取り、遠藤周作さんの優しい語り口になぐさめてもらってきました。

 

こちらに登場する女性像は、胸に手を当てれば誰もが自分自身の中にみつけることができます。
信仰は持っていませんが、キリスト教の世界観を覗いてみる感覚。
男女関係なく人間というものをみつめるおもしろさを教えていただいているようにも感じます。

 

私にとってほっとできる存在の本です。
時間空間を超えて作者と交流することを、密かに楽しんでいるのかもしれません。
この本を読んだ若い頃の母を感じてみることも、歳を重ねる中で癒しになっています。

 

女性というものを理解する助けにと、文庫の古本を購入された若い男性がいました。
古い価値観の時代に、遠藤周作さんがその時代を生きる女性のために書いた文章を、今の感覚で読む。
そんな方がいらしたことそのものがうれしくなります。 

 

あらゆるものの崩壊を感じる時勢です。
宗教もどんどん崩壊していくでしょう。
はるか昔からの人類の痛みが少しずつ解け、皆が和する新しい世界も見てみたいという希望は、強く持ち続けることにします。

 

 

 

遠藤周作「聖書のなかの女性たち」

 

 

 

読書空間 ひつじ日和