たいていのことは忘れてしまう、いい加減な性能を誇る私の記憶。
例外的に深いところからじわじわと浮上してきて、この数年かけてしっかり自覚した後悔がひとつだけあります。
それは早過ぎたピアノとのお別れ。
いくらせっかちだからって、そんな早くに断捨離始めなくてもねぇ。
正確には叔父から譲り受けたピアノ。
ちょっと変わった素敵な色。
くるくる回る椅子に座るだけでいい気分。
いつもピアノの椅子で考え事をしたり、レコードを聴いたり。
ただそこにあるだけでよかったのに。
大好きな先生が遠くへ引っ越してしまい、代わりの怖い先生になってしばらくすると、レッスンを辞めてしまいました。
お稽古の日、先生のお宅のドアの前で心を決めると、くるりと背を向け黙って帰宅。
「何かが違う!」という正直な気持ちに従いずんずん歩いて帰りました。
その後、ピアノのことはとても好きなのに罪悪感から触らなくなり、広い家ではありませんのでいつしかどこかへ引き取られていきました。
リビングが少し広くなったかわりに、本当は心の底からさみしかった気持ち。
当時はうまく自分の思いを親に伝えることができず、全て無かったことにしたようです。
夫の実家から救出された現在のピアノも有り難く大事にしていますが、もう二度と会えないと思うと「私のピアノはあの子だけ」という気持ちは変わりそうにありません。
こちらの絵本は「ピアノお稽古あるある」になりそうなお話です。
読み聞かせをしながらほろりと涙が。
長い間、無自覚だった後悔があったことに気付けたことは、幸いなことでした。
読書空間 ひつじ日和