2021-01-01から1年間の記事一覧

忘却

巡り巡ってひつじ日和にやってきた古本。 巻末にメモ書きを見つけました。 大切な人からの贈り物でしょうか。 1993年11月6日晴れ 41歳の誕生日に 〇〇〇〇(←お名前) 連尺町の谷島屋書店にて と、青いインクで記されていました。 購入先は歩いてすぐそこの老…

トーン・テレヘン「きげんのいいリス」

今まで読んだことのない独特な作品です。 木からよく落ちるゾウ。 アリにたかられるリス。 哲学するカブトムシ。 吠えてみたいカメ。 もしこんな動物たちがいたら、観察するだけでも飽きません。 手紙のやりとりが好きでした。 がまくんとかえるくんもこの中…

堤久美子「サルトルの教え」

サルトルさんの入門にはちょうどよい本かと思います。 事実と感情を区別し、事実を正しく認識します。 そこがスタートです。 スタートですが、これが出来ると7割くらい終了しているような気がします。 自己を観察するところはブッタの瞑想と共通します。 奥…

満願

「西国三十三所巡礼」の満願札所である谷汲山華厳寺は、静かな岐阜の山の中にありました。 朝早くの境内はひっそりと落ち着いて、苔むした様子は千二百年余りの歴史が迫ってくるようです。 お戒壇巡りでは真っ暗闇の中、御本尊で秘仏の十一面観世音菩薩の真…

村上春樹「国境の南、太陽の西」

村上さんの作品は秋に読みたくなります。 「スプートニクの恋人」「海辺のカフカ」など秋に読んでいることが多いからかと思います。 先日ラジオで紹介されていたせいもあり今年はこの本を。 前回は2012年でした。 内容を既に知っているのになぜか読み進めて…

コスモス

どこかにコスモス畑はないかな〜と探しているうちは、見頃の前か後ばかり。 今年はタイミングが合わなかったとあきらめた時、白いコスモスが咲いているのを見つけました。 白だけ、というのもなかなかいい雰囲気。 語源はギリシャ語で、秩序ある宇宙を意味す…

細川護熙「閑居の庭から」

似たような本を読んでしまっていると思うことがたまにあります。 少し異なる分野を読みたいと感じた時、参考にしているのが細川さんの書籍リストです。 歴史、詩歌、宗教、思想、哲学、芸術、生き方など、古典を中心に幅広く、新たな発見と好奇心を刺激しま…

2021年10月の予定

2021年10月の予定です。土日はおやすみです。(タップorクリックで拡大します。)月は不思議な天体です。読書空間 ひつじ日和

有川真由美「人生で大切なことは、すべて旅が教えてくれた」

なぜか初めての海外旅行先がインドです。 飛行機も初めて。 宿も予約無し。 バックパック一つ。 往復のチケットだけを握りしめて。 とにかくすごい旅でした。 こんな場所があるなんて。 何もしないで街角に座っている人。 ガンジス河の火葬場。 歩いている人…

秋が深まり空気が澄んで、月がきれいな季節になりましたね。 月の和名を知った時、ああ日本人でよかったとしみじみ思いました。 まんまるの満月より少し欠けた月も好きです。 ためらいがちに、いざようように出てくるから、十六夜(いざよい)の月、なんて知る…

刻々

「日の出は元旦だけにあらず!」 母ちゃんの唐突な思い付きで、家族みんなで早朝の海へ行った時のこと。 砂浜は昼間と違って冷んやり。 暗闇から刻々と変わる空の色に一同感嘆。 薄暗い波打ち際で、超高速な動きをする子ガニを追いかけます。 太陽が昇ると一…

カミュ「ペスト」

アルジェリアのある街で突然ペストが発生します。 なかなか現状を認識し、対策ができない行政。 早く手を打たないと大変なことになると考える医師。 ロックダウンとなっても相変わらずな一部の市民。 懸命に患者の命を救おうとする医師やボランティア。 街か…

福岡伸一「生命海流」

「ガラパゴスに行きたい」と長年の願いがかなった福岡ハカセ。 とっても嬉しそうです。 また現地では過酷な環境にもかかわらず活き活きとしています。 ガラパゴス諸島の成立、生物の種類や環境、旅行記、船での生活が福岡ハカセらしい観点で記述されています…

誤認

「かとうようこ 日本の国の姿」という本の注文を承り、探してみると一致するものがなく、う〜んこれかな?という本が「加藤陽子 この国のかたちを見つめ直す」でした。 本のタイトルなんて、なかなか正確に覚えられませんよね…。 「100万回死んだねこ 覚え違…

吉成真由美「知の逆転」

6人の凄い人たちにインタビューをした記録です。 吉成さんが傾聴し、的確な質問をしている印象です。 そして全ての人に共通の質問をしているのも興味深く感じました。 どの方も面白かったのですが、特にトム・レイトンさんに興味を持ちました。 先日ニュース…

鯨井康志「「はたらく」の未来予想図」

人間はなぜ働くのでしょうか。 生きがいの一つに、誰かの役にたっていると思える、ということがあげられると思います。 金銭的なことももちろん重要ですが、それよりも自分で手を動かし、その結果誰かのためになっていると思えることが。 そう考えると働き方…

瀧羽麻子「株式会社ネバーラ北関東支社」

北関東という文字から連想することはありますでしょうか。 自然が豊かですが拠点となる街には人がたくさんいる印象です。 ネバーラの北関東支店もそんな場所にあります。 創業当時はここが本社でした。 人が少なく、娯楽も無い。 駅前に1件しかない飲み屋。 …

心変わり

あの「いえもりさん」を見なくなりました。 一日は空いても、翌日には必ず来ていたのに…。 心配していた家族もついにあきらめ、その名を呼ぶこともなくなりました。 しかし、ある晩、息子がお隣の窓に見つけて教えてくれました。 ひとまず「やもりん」は元気…

土井善晴、中島岳志「料理と利他」

中島さんが土井さんの面白さと哲学をぐいぐい引き出しています。 印象的な言葉は「和える(あえる)」 「和食では混ぜるっていうことがないんですよ。」 「ひとつひとつの食材に敬意を払います。ですから「和える」。それぞれの存在感を、美しいところを尊重さ…

久坂部羊「モーツァルトとレクター博士の医学講座」

久坂部羊さんの仕事の一つが、大学での「医学概論」の講義です。 この本はその講義ノートの一部を読み物風にアレンジしたものです。 主に人体の構造とその働き、といったところでしょうか。 面白い内容がたくさんありました。 ・牛乳をたくさん飲むと骨折し…

実り

お休みに久留女木の棚田をぐるっと歩いてきました。 「竜宮小僧」のいい伝えのある湧水は、ひっそりと山の奥にありました。 「竜宮小僧伝説」を元にした能の舞を、数年前に静岡文化芸術大学の公開講座で見たことがあり、どんなところなのか確かめたかったの…

原田マハ「さいはての彼女」

バリバリ仕事をしている女性が、なぜか北海道を一人で旅することになってしまいました。 短編4つ。 女性の一人旅のお話が3つ。 遠い昔、車1台バイク2台で北海道に行ったことがあります。 どこまでも続く真っすぐな道。 バイクのタイヤが平らになってしまった…

池上彰「知らないと恥をかく世界の大問題12」

世の中には知らないことが数多くあります。 そして知れば知るほど世界は複雑に構成されていることが分かります。 それが分かると安易に何かを言うことは難しく思えます。 池上さんはエピローグでこうおっしゃっています。 「歴史を学ぶというのは過去につい…

福岡伸一「迷走生活の方法」

副交感神経優位の生活。 それを「迷走生活」と名付け実践する福岡ハカセ。 思い迷うのではなく、なるべくストレスの種から遠ざかること。 すぐに忘れること。 流れに抗せず流れにまかせること。 重要です。 「なぜ勉強しないといけないんですか?」 高校生、…

由来

地元の大学生がフィールドワークでお店を訪ねてくれたり、生き方や働き方を熱心に考えたりしている姿からは、いつも希望や明るい未来を感じます。 「ひつじ日和という本屋をなぜ始めたか」について興味を持つ方も、時折いらっしゃいます。 明確な由来につい…

今野真二「日日是日本語」

日本語学者の今野氏が、2018年にことばについて考えたことを日記として記述したものです。 日々丁寧に考えていることが伝わります。 買ってきたソラマメの袋に「蚕豆」という記載がありいろいろと調べてみたり。 お釣りをもらって、なぜ「釣り」なんだろう、…

赤い傘

雨が降り出し、駐車場もありませんし、この後はどなたもみえないかも…。 ぼやっと気を抜いていますと、お店の古い扉のガラス越しにはっとするような赤い傘が映りました。 雨の日に明るい色の傘っていいものですね。 物持ちがいいので当分先かもしれないです…

夏目房之介「漱石の孫」

もし自分が夏目漱石の孫だとしたら、どのような人生になっていたでしょうか。 外部からあれこれ言われることの嫌悪感と、でもなんとなく誇らしい気持ちが入り混じり、普通ではない10代だということが容易に想像できます。 房之介さんは漱石の長男の子供です…

2021年9月の予定

2021年9月の予定です。土日はおやすみです。祝日は営業予定です。(タップorクリックで拡大します。)読書空間 ひつじ日和

樋野興夫「明日この世を去るとしても、今日の花に水をあげなさい」

読書をしていると、心に残る言葉に出会うことがあります。 それはその時の心の状態により変わります。 何度もそのような言葉に救われてきたように思います。 樋野さんはガン哲学外来で言葉の処方箋を出します。 その一部は読書で出会ってきた言葉たち。 患者…