読んだ本のメモ(書棚担当)

司馬遼太郎「街道をゆく39 ニューヨーク散歩」

司馬遼太郎さんがニューヨーク行きました。出会う人、行く場所がとても魅力的に思えます。それは司馬遼太郎さんの、人を信じて良い所を見つけ出す能力、そして豊富な知識がそうさせているのではと感じます。 運転手のマクドナルド氏、案内の平川氏、ドナルド…

牟田都子「文にあたる」

何気なく読んだり見たりしている本や雑誌、新聞。多くの人が関わっていることは何となく知っていましたが、校正者という存在を知ったのはいつでしょうか。誤字、脱字を訂正するだけではなく、もっと大きな視点から文章を確認します。 牟田さんは偶然校正とい…

滝沢秀一「このゴミは収集できません」

先日、静岡県三島市が粗大ごみをメルカリに出品する、というニュースを耳にしました。三島市の最終処分場はほぼ満杯で、年間約8000万円を使って県外の施設に焼却灰を搬出しているそうです。使えるものは誰かに利用してもらった方が、環境にも税金にも優しく…

フランツ・カフカ「雑種」

誰の言葉だったか忘れてしまいましたが、「カフカを読んだから小説が書けるようになった」と言っていた人がいます。(ガルシア・マルケスかも) その意味がよくわかります。100年以上前にこんなにぶっ飛んだ小説を書く人はあまりいなかったでしょう。そこま…

ガルシア・マルケス「ぼくはスピーチをするために来たのではありません」

人前で話すことがあまり好きではなかったガルシア・マルケスさん。それでも人々はノーベル賞作家の言葉を聞きたがります。生涯で20回と少しだけ、人前で講演をしました。この本はその記録です。 芸術方面に多大な関心を寄せるとともに、中央アメリカ、南アメ…

カレル・チャペック「園芸家12ヶ月」

プランターで夏野菜を作っていると、だんだん土づくりに興味が出てきます。土がうまくできた年ほど収穫量も上がる気がしています。 秋、冬にかけて、生ごみをプランターに投入します。コンポストほど早くはありませんが、微生物がしっかりと仕事をします。数…

「オスカー・ワイルド ショートセレクション 幸せな王子」

オスカー・ワイルドの童話3話と短編2話。短編2話は、当時なぜオスカー・ワイルドが人気だったのか納得するくらい興味深い作品でした。 ミステリーとユーモアと最先端の科学が少しずつ入っています。 このショートセレクションシリーズは、その作者の入口にぴ…

アンヌ・レエ「エリック・サティ」

不思議な人、エリック・サティ。良寛さんのように子供たちに優しく、普段からよく歩き、曲に変なタイトルを付け、楽譜に風変りな注意書きを残し、なのに魅力的な曲を数多く創り出し、人々から好かれたり、嫌われたり。 変なタイトルの曲「犬のためのぶよぶよ…

奥田英朗「我が家のヒミツ」

もし妻が突然市議会議員選挙に「出馬する」と言いだしたら。もし同期が出世し、自分が関連企業に出向となってしまったら。もし妻が隣に住んでいる人の様子をうかがい「怪しい」と言い出したら。もし娘が突然留学したいと言い出したら。もし職場に有名人がや…

ジョージ・オーウェル「動物農園」

イギリスの田舎の農園。動物たちは幸せに暮らしているようです。 ある日、自分たちは人間に搾取されているのではと気が付きます。よりよい生活をするために動物たちが実行したことは何か。 自由とは、国家とは、リーダーとは。 フェイクニュースをそれと見破…

原田マハ「ジヴェルニーの食卓」

道具が進化するに伴って変化していくことがあります。通信、交通、決済など少し考えただけでも様々な例が挙げられます。 19世紀末にチューブ入りの絵の具が売られるようになり、外で絵を描くことができるようになりました。そこから印象派と呼ばれる人達が増…

羽根田治「パイヌカジ 小さな鳩間島の豊かなな暮らし」

南の島に惹かれてしまうのはなぜでしょう。 沖縄八重山諸島には様々な島があります。二つの大きな島、石垣島、西表島。リゾート地で聞いたことのある小浜島。水牛車でおなじみの竹富島。 西表島の北方に小さな島があります。1周4km程度、人口は50人程度。鳩…

酒井隆史「ブルシット・ジョブの謎」

デヴィッド・グレーバーさんが書いた本「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」はとても良い内容ですし、できれば多くの人に手に取っていただきたいのですが、その分量と(585ページ)と値段(4,070円)のため、躊躇してしまう本でもあります。 この…

夏目漱石「思い出す事など」

夏目漱石の本の中でも、この新潮文庫の「文鳥・夢十夜」はわりと好きな部類に入ります。 その理由はエッセイのような、日記のような、短編のような小さな作品がたくさん入っているからです。 「鳥を御飼いなさい」から始まる「文鳥」。ロンドンや日本を舞台…

ヘンリー・デイヴィッド・ソロー「一市民の反抗 良心の声に従う自由と権利」

ヘンリー・デイヴィッド・ソローの魅力は頑なではないところです。原理主義的に思っていることを押し通し、相手をコテンパンにやっつけてしまうことは一切ありません。思想も行動もとても自由で柔軟です。 子供たちに人気があったり、ガンディーがこの本を読…

岡本太郎「芸術と青春」

岡本太郎さんがパリに住んでいた頃のことを思い出して記したもの、両親について、等、エッセイ集です。 やはり普通ではない何かを発している内容が大部分ですが、一人旅の時に孤独で寂しいと思っていたことに安堵したりもしました。 この方が5年間も軍隊生活…

ドナルド・キーン「正岡子規」

正岡子規の人生は流れ星のようです。短いけれども眩しいくらいに燃焼します。 頑固な面もありそうですが、考えをすぐに改めることのできる柔軟性もありました。 好きなことには熱中するけれども、興味が無くなるとすぐに投げ出します。(誰でもそうかもしれま…

茨木のり子「倚りかからず」

愛と自由を感じる作品。茨木のり子さんが73歳で刊行しました。 何かをやる時に、できるだけ独力でやってみることは重要だと思います。倚りかからずに。そこからきっと得る物があるでしょう。もし躓いてしまってから助けを求めても遅くはありません。 「お休…

井出留美「食べ物が足りない!」

どんどん増え続ける人口。2022年に80憶人を超えました。2050年くらいには100憶人に達する予測もあります。 その時食料はいったいどうなってしまうのでしょうか。 現状では十分に足りているようですが、偏りがあり世界中の人々に行き渡っていません。 問題は…

滝沢秀一「ゴミ清掃員の日常」

ゴミを分別していると迷うことがたくさんあります。 ・プラスチック製容器包装の場合、シールはどの程度付いていても再生可能なのか。・アルミ缶のキャップはアルミとして出して良いのか。(シーリングに樹脂が使用されているため)・糸で綴じられているノー…

夏目漱石「こころ」

人間はどうしても自分のことを優先したくなってしまうものです。半面、利他的に生きる気持ちよさも合わせ持っています。 頭で考えると利己的になってしまいそうです。本能は意外と利他的なのかもしれません。 進化の過程で利己的に生きることへ少し傾いてし…

夏井いつき「瓢箪から人生」

正岡子規を入口に知った夏井さん。その半生は山あり谷あり。動けば人に出会い、それが次の出会いのきっかけとなり、どんどん広がっていくパワフルな人生。 マイナスと思われることも持ち前の思考でプラスに変えてしまいます。 ライフワークでもある俳句の入…

なぜ、脱成長なのか

近年の激しい気象、あらゆるものが不漁となっている魚介類、食料不足への懸念、人の心を蝕む働き方。 このままの状況を続けることを良し、としている人はかなり少ないのではないでしょうか。 脱成長というと、不景気のように経済が停滞し、どんよりと暗い状…

森下典子「こいしいたべもの」

たべものについてのエッセイ。読んでいるとお腹が空きます。写真のような絵がそれを刺激します。 そして昔食べていたものを思い出します。 例えば、上高地ビスケット、何でもないジャガイモパン、ジャスコのイートインコーナーのたこ焼き。 上高地ビスケット…

カズオ・イシグロ「クララとお日さま」

人間の「こころ」はどこにあるのでしょうか。脳の働きの一部だと思いますが、胸部とつながっている経験もしていますし、「こころ」と心臓周辺との関連の深さを表す言葉はたくさんあります。 AIがどんどん進化していきますが、AIが「こころ」を持つことは可能…

漱石先生ぞな、もし

編集者でも作家でもあった半藤さん。義祖父は夏目漱石。 ご専門の昭和史について調べていると、必然的に夏目漱石が生きた時代に辿りつくそうです。漱石の本を読み、いろいろと調べていたら、漱石に関するちょっとしたエピソードが本になるくらいたくさん集ま…

孤独を生きる

孤独に生きた人は過去にもたくさんいます。そして魅力的な人ばかりです。鴨長明、ヘンリー・デビッド・ソロー、良寛さん。現在、ポツンと一軒家に住む人や、山中でスモールハウスに住む人々もきっとそうに違いありません。 孤独な時間は、人間の心を少しだけ…

弱いつながり

社会人になりたての頃、新聞くらい読め、ニュースくらい見ろ、と盛んに言われました。当時はそういうものかと新聞にはできるだけ目を通すようにしていました。 ある時、ニュースに接しない生活をしたらどうなるのだろう、と思い、新聞もテレビも見ない時期が…

数学者列伝

古今東西の数学者の人生を、藤原正彦さんが掘り起こします。 藤原正彦さんは数学史の本を読んでも、「業績紹介に重点がおかれていて、人間象は浮かばなかった」とおっしゃいます。また伝記も「履歴書のようなものであったり、腑に落ちない憶測が多かったり」…

原田マハ「サロメ」

1890年代ロンドン。人気絶頂のオスカー・ワイルド。独特のスケッチが瞬く間に世間に知れ渡り、一気に階段を駆け上がるオーブリー・ピアズリー。(今見ても不思議な絵です)オーブリーのために行動する姉、メイベル。オスカー・ワイルドの友人アルフレッド・ダ…