読んだ本のメモ(書棚担当)

三木那由他「言葉の展望台」

何かを頼んでくるときに、「先生、先生」とごまをするようにお願いしてくる人が苦手でした。先生と持ち上げておけば何でも聞いてくれそう、と思われていたのかもしれません。ちっとも先生ではないのに。 三木那由他さんも「先生」という言葉にもやもやしてい…

ジル・ボルト・テイラー「奇跡の脳」

人間の体は不思議なことばかりですが、その中でも脳は突出して神秘的です。何かがインプットされると瞬時に働いてアウトプットします。特に感情のようなものはどのような原理から来ているのでしょうか。 まだ未知な部分が多い脳ですが、脳科学者であればわか…

ラブカ

ラブカ鮫です。食べると美味しいみたいです。駿河湾にも生息しサクラエビも好物のようです。歯は三叉フォークのようで、それが大量にあり、噛まれたら大変です。現在生きている鮫ではラブカだけの特別な歯なんだとか。 チェロバッハの無伴奏チェロ組曲は魅力…

似ていることば

何気なく話している日本語。区別なく遣ってしまっている言葉が結構あります。例えば、舟と船 交ぜると混ぜる 使用と利用。今変換して思ったのが、使うと遣う。 実はちゃんと違いがあります。似ているものには訳がある、ですね。(NHK ミミクリーズより) 似て…

未来に本当に必要なものは何か

今後の日本に必要な社会的インフラストラクチャーは何でしょうか。その指針の一つとして人々の幸福の最大公約数が高いことが挙げられると思います。人口が減っていく社会を認め、多くの人々ができるだけ負担なく、穏やかに暮らせること。 現在建設中のリニア…

庄野雄治 編「コーヒーと短編」

先日読んだ庄野雄治さんのエッセイが心に沁みたので、短編も書いているのか、と思って読み始めた本です。 ところがこれが勘違いで、庄野雄治さんが選んだ短編集でした。選択基準は「ずっと昔から読まれていて、百年後にもよまれているであろう作品たち」だそ…

白石仁章「情報に賭けた外交官 杉原千畝」

現在の日本では移民がかなり制限されています。特に難民となるとほとんど拒否しているといった状況です。 確かに言葉も通じない人達が近くに住んでいたら怖いと思うはずです。でも同じ人間です。交流すればきっと良い関係を築くことが出来るはずです。 第二…

玉村豊男「晴耕雨読ときどきワイン」

長野県でヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリーを営む玉村豊男さん。東京から長野県に移住しさらに現在ヴィラデストがある東部町(現東御市)に引越すまでの日記のような愉快なエッセイです。 食のこと、旅のこと、軽井沢での生活、自然のこと。 中…

ブルシット・ジョブ

ブルシット・ジョブのブル(bull)は、フランス語のboleに由来する言葉です。意味は「詐欺、欺瞞」。シット(shit)も「くだらない、意味のない、厄介な」という意味があります。 著者のデヴィッド・グレーバーは「本人でさえその存在を正当化し難いほど、無意味…

宮本常一「忘れられた日本人」

昭和初期に日本中を旅し、各地の老人にお話しを伺いました。歴史に名を残すことのない80歳前後の地方の普通の人々です。幕末からそれまでどのように生活をしてきたのか。現在の日本で生活している人からは、同じ国とは思えない事柄がたくさんあります。読む…

原田マハ「暗幕のゲルニカ」

美術とものがたりを複合させた原田マハさん。いくつかの能力が必要です。絵画について、それにまつわる歴史について。そして想像力と文章力が強力な接着材となり魅力的な作品を生み出します。 今回はパブロ・ピカソが平和を願って描いた「ゲルニカ」を巡る物…

「吾輩も猫である」

猫の思い出はそれほどありません。小さい頃顔をひっかかれたこと。おびえる子猫を遠くから観察していたこと。あの猫たちは何を考えていたのでしょうか。 子どもたちは猫を見るととても良い反応をします。一番身近だけれどなかなか交流のできない生き物。もち…

ダン・ブラウン「天使と悪魔」

かつて病気の対処方法として瀉血が行われていました。瀉血とは大量の血液を体外に排出することで病気を改善する治療法です。現代の医療ではなかなか想像の出来ない方法ではないでしょうか。 加持祈祷の類も同じです。どんなに祈ってもそれを改善してくれる人…

庄野雄治「融合しないブレンド」

コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスの高さ、要するに効率の良さが求められる現在。そこからとてもかけはなれたところにいらっしゃる庄野さん。だからこそ心に染み入る何かがあります。 夕方の一日が終わってしまう淋しさと、夕焼けの暖色から感じる…

服部雄一郎、服部麻子「サスティナブルに暮らしたい」

人類がこのまま浪費生活を続けていたら地球はどうなってしまうのでしょうか。自然災害の甚大さはその影響を受けている可能性があります。太陽からの恵みを短時間で消費尽くしてしまい、結局物不足に陥り、紛争につながってしまうかもしれません。 そんな状況…

司馬遼太郎「街道をゆく9 信州佐久平のみち 潟のみちほか」

おおよそ半世紀前、司馬遼太郎さんが佐久平にやってきました。上田に入り、海野宿、小諸を経て、佐久平へ。 土地の歴史、地名の由来など、かつて住んでいたのに何も知らなかったことを痛感します。あの何も育たなそうな土地で何世紀も人々が生活しつづけてい…

中村圭志「亜宗教」

人間には想像するという能力があります。他の動物には無さそうなので、特殊能力と言って良いかもしれません。想像力があるからこそこの世界は豊になりました。文化、科学、芸術その他、全て想像力の賜物です。 一方想像力があるからこその弊害もいくつかあり…

大問題

突然洗濯機が壊れたらどうしますか?コインランドリーを探すか、手で洗うか。 一度止るとどんどんたまってしまう夏の洗濯もの。 先日その恐怖がやってきてしまいました。排水が出来ていないために止ってしまうトラブルです。 排水のホースが詰まっていること…

早見和真「店長がバカすぎて」

人は多様性に満ちている生物だと思うことがあります。心の距離感や物理的距離感の相違、おそらく共通して持っているであろう前提のズレ。これらを原因としたすれ違いも生まれます。例えば穏便にすませようとして、いろいろ考えて伝えた言葉を真逆に理解され…

大石直紀「美しい書店のある街で」

もし好きな本屋さんを1つ挙げてください、と言われれたらどのお店が頭に浮かぶでしょうか。全国で統計をとったら上位にランキングされること間違い無しの恵文社さん。もうすぐ創業50年だそうです。 その恵文社さんが登場する短編集。京都、一乗寺にある個性…

羽根田治「山はおそろしい」

山は自然の驚異がダイレクトに人間に影響を及ぼします。雷、雪、気温などの天候、熊、蜂などの生物。それに知識や装備、日程や体調、性格等も複雑に影響し、まさかと思うような状況で遭難してしまいます。 静岡県では軽装での富士登山が毎年報告されています…

かこさとし「未来のだるまちゃんへ」

「だるまちゃんとてんぐちゃん」の絵本を読んだのはいつだったのでしょうか。友だちの真似をしたがるだるまちゃん。それに応えようとするけれども空回りのうっかりだるまどん。驚きの解決方法。 子どもの心に何かを訴える作品を描き続けたかこさとしさんの自…

ベア・ジョンソン「ゼロ・ウェイスト・ホーム」

数年前子どもたちとウミガメの勉強会に参加したときです。砂浜にプラスチックがどのくらい埋まっているのか体験しました。適当に砂をすくってふるうと、かなりの量の小さなプラスチック片が出てきます。世界中の砂浜がこんな状況だと考えるとゾッとしました…

平野恵理子「五十八歳、山の家で猫と暮らす」

小さい頃、八ヶ岳を見ながら学校に通っていました。冬のよく晴れた朝にはなぜかとても近くに見えました。盆地の対角線にあるその山は、もし一つの山であったらとてつもなく高かったに違いありません。八ヶ岳の麓を良く通るようになってからも、なんとなく惹…

ジュリアン・ロイド・ウェッバー「パブロ・カザルス 鳥の歌」

自由と平和を希求したチェリスト、パブロ・カザルス。ファシズム政権を批判し、空襲の最中でも逃げずにバッハを弾き続けます。 カザルスは「芸術家には自由と何者にも束縛されない探求が必要だ」と言います。「芸術家の責任は重い」とも。その理由は「特別な…

ベルンハルト・シュリンク「朗読者」

最近読んだ本にハンナ・アーレントさんがよく登場します。きっと今までも目にしたことがあったのでしょうけれど。 先日ハンナ・アーレントさんに関する本を読んでいて、ふと「朗読者」のことを思い出しました。確か、この登場人物もハンナだったな、と。ドイ…

中島敦「光と風と夢」

「ジキル博士とハイド氏」の作者、ロバート・ルイス・スティーヴンソンは晩年サモアに住んでいました。病弱な身体に良い温暖な南の島に興味を持っていたようです。 なぜか中島敦はこのスティーヴンソンのことを小説にしました。(ロバァト・ルゥイス・スティ…

仲正昌樹「悪と全体主義」

人間はとても想像力が豊です。想像力があるからこそ誰かのことを思いやることができるし、文化芸術も楽しむことができます。 その想像力が極端に悪い方に行ってしまうのが全体主義と呼ばれるものではないでしょうか。閉塞感がある時代に、その原因は明確な誰…

磯田道史「武士の家計簿」

とても便利な世の中になりましたが、なんとなく先行きに暗雲が立ち込めているような時代の雰囲気もあります。天災、疾病、不安定な物価、紛争、難民問題。世界はどこへ向かおうとしているのでしょうか。この先どのように生きていけばよいのか不安を持ってい…

大崎梢リクエスト!「本屋さんのアンソロジー」

ある人のお話。お弁当屋さんで唐揚げ弁当を注文しました。次に入ってきた人も唐揚げ弁当でした。そのお弁当屋さんはおかずとごはんが別々の入れ物に入っています。入れ物の色や形は一緒なので、おかずとごはんの区別はつきません。 家に帰って開けたところ、…